横紋筋肉腫のよりよい治療のために

ビンクリスチン、アクチノマイシンD、シクロホスファミドからなるVAC療法が、横紋筋肉腫の治療法として長期にわたり使用されてきました。この治療を用いたJRSG(日本横紋筋肉腫研究グループ)の初代の臨床試験のJRS-Iの低リスクA群、低リスクB群、中間リスク群では、それぞれ91.7%、87.5%、75.0%の良好な3年無増悪生存率という結果でした。しかしながら、これらのリスク群の治療では、シクロホスファミドの投与量が多く、急性毒性としての骨髄抑制に伴う感染症、肝中心静脈閉塞症、長期合併症としての不妊症が問題となります。

JCCG(日本小児がん研究グループ)横紋筋肉腫委員会の最新の臨床試験のJRS-IIでは、これらの問題を解決するための治療法を開発する臨床試験を計画しています。低リスクA群で、ビンクリスチン、アクチノマイシンD、シクロホスファミドからなる24週の治療を行い、不妊症のリスクを最小限にしたシクロホスファミド投与量としている。また、低リスクB群、中間リスク群では、ビンクリスチン、アクチノマイシンD、シクロホスファミド、イリノテカンからなる42週の治療を行い、イリノテカンを導入することでシクロホスファミドの投与量を下げて、治療成績を維持しながら、不妊症の長期合併症を軽減する治療開発を目的とした臨床試験を計画し、一部で開始しています。

高リスク群の治療成績は不良であり、最大限の化学療法、放射線治療、外科療法を行っても、3年無増悪生存率は30%前後です。米国の小児がん研究グループであるCOG(Children’s Oncology Group)で行われた最新の高リスク群の臨床試験であるARST0431試験は、これまでに行われた治療で最も再発までの期間を長くできることが示唆されました。つまり、横紋筋肉腫の細胞を最も少ないレベルまで減らせる治療であるといえます。しかし、3年無増悪生存率はこれまでと大きく変わらず、治癒に至る割合を大きく増やすことはできませんでした。JCCG横紋筋肉腫委員会の最新の臨床試験のJRS-IIでは、既存の治療を最大限に使用したARST0431試験の治療により横紋筋肉腫の細胞を最小限まで減らした後に、免疫療法などの新規治療法を組み合わせることで治癒を目指しています。

上記の通り、JCCGの横紋筋肉腫委員会では、全てのリスク群(低リスクA、B、中間リスク、高リスク)に対する臨床試験を実施しています。横紋筋肉腫の治療成績の向上と合併症の少ない治療を目指した臨床試験を行っておりますので、臨床試験の参加にご理解とご協力をお願いしたいと思っております。